はじめに
近年、海外移住やビジネス拠点として「ジョージア(Georgia)」が注目を集めています。
特に税制が比較的緩やかで、法人設立が容易なため、「ジョージア × オフショア法人」の組み合わせに関心を持つ起業家が増えています。
しかし、ジョージアは従来のタックスヘイブンとは異なり、オフショア法人を設立する際にいくつかの注意点があります。
本記事では、ジョージアでの法人設立の現状、税制メリット、リスク、そして他の国との比較を交えて詳しく解説します。
1. ジョージアとは?
ジョージアは、東ヨーロッパと西アジアの境に位置する国で、経済自由度の高さや親ビジネス的な政策で近年注目を浴びています。
以下の特徴から、移住者や起業家に人気があります。
ジョージアの魅力
- 低生活コスト:首都トビリシでも生活費は比較的安い
- 税制優遇:一定の条件を満たせば法人税・所得税の負担が軽減される
- シンプルなビザ制度:長期滞在が容易
- 英語が通じる環境:ビジネス環境も整備されつつある
では、ジョージアでのオフショア法人設立について具体的に見ていきましょう。
2. ジョージアでの法人設立の種類
ジョージアで法人を設立する際、主に以下の2つの選択肢があります。
2.1 通常の法人(LLC:Limited Liability Company)
- 設立費用が安い(約100〜200ドル程度)
- 法人税率は通常15%
- 国外所得には原則として課税されない
- 金融機関の開設が容易(ただし最近は厳格化)
2.2 「バーチャルゾーン(Virtual Zone)」法人
ジョージアでは、IT企業向けに「バーチャルゾーン(VZ)」という制度があり、
- 法人税が0%
- 配当税も非課税(ジョージア国外に住んでいる場合)
- ジョージア国外でのビジネスに適用
このため、特にIT系ビジネス(ソフトウェア開発、Webサービス運営など)を行う起業家には人気があります。
3. ジョージアでのオフショア法人の税制メリット
3.1 法人税の軽減
ジョージアでは、通常のLLCであっても 法人税15% と比較的低めに設定されています。
さらに、バーチャルゾーン法人を利用すると 法人税0% となるため、適用条件を満たす事業にとっては大きなメリットです。
3.2 配当税の免除
- ジョージア国外に住んでいる場合、配当税は非課税
- ジョージア国内で配当を受け取る場合は5%
このため、海外在住の起業家がジョージア法人を設立し、配当を受け取る形にすれば、税負担を大幅に軽減できます。
3.3 付加価値税(VAT)の免除
ジョージア国内でビジネスを行わない限り、付加価値税(VAT・18%)は課されないため、海外向けのサービスを提供する事業には有利です。
4. ジョージアでのオフショア法人のデメリットとリスク
4.1 銀行口座開設の難易度が上昇
近年、ジョージアの銀行がAML(アンチマネーロンダリング)規制を強化しており、外国人による法人の銀行口座開設が厳しくなっています。
特に以下の点が問題になります。
- 現地に居住していない場合、口座開設が難しい
- 取引の透明性を求められるため、十分な事業実態が必要
4.2 タックスヘイブンではないため、完全な節税は難しい
ジョージアはタックスヘイブンとは異なり、
- 一定の所得には税金がかかる
- 国際的な税務情報交換(CRS)に加盟しているため、完全な匿名性はない
4.3 CFC税制(タックスヘイブン対策税制)の影響
日本の居住者がジョージアで法人を設立しても、
- 日本のCFC税制(タックスヘイブン対策税制)によって、日本国内で課税される可能性がある
したがって、ジョージア法人を利用した節税スキームを考える場合は、日本の税務ルールとの整合性を確認する必要があります。
5. 他国との比較:ジョージア vs フィリピン vs 香港
項目 | ジョージア | フィリピン | 香港 |
---|---|---|---|
法人税率 | 0%(バーチャルゾーン)/ 15% | 25%(特区なら5%) | 16.5% |
配当税 | 0%(国外居住)/ 5%(国内) | 10% | 0% |
銀行口座開設の難易度 | 高め | 比較的簡単 | 高い |
CRS(情報共有) | 加盟 | 未加盟 | 加盟 |
居住のしやすさ | 比較的容易 | 容易 | 難しい |
ジョージアはIT系ビジネスに特化した法人に向いている一方で、銀行口座開設の難しさや税務リスクがあるため、完全なオフショア法人としての利用は慎重に検討すべきです。
6. まとめ:ジョージアでオフショア法人を設立すべきか?
ジョージアはタックスヘイブンではありませんが、
✅ ITビジネス向けのバーチャルゾーン法人なら 法人税0%
✅ 海外居住者なら 配当税0%
✅ 生活コストが安く、長期滞在もしやすい
一方で、 ⚠️ 銀行口座開設が難しくなっている ⚠️ CFC税制の影響を考慮する必要がある
結論として、「ジョージアはIT系ビジネスに適した環境ではあるが、完全なオフショア法人としての利用には向かない」と言えるでしょう。