はじめに
近年、多くの日本人が「タイ移住 × オフショア法人」という選択肢を検討しています。
理由としては、生活コストの安さ、温暖な気候、親日的な国民性などが挙げられます。
しかし、タイでオフショア法人を設立することは本当にメリットがあるのでしょうか?
結論から言うと、現在のタイの税制では、オフショア法人を活用した節税メリットがあまり得られません。
それどころか、日本の税務当局やタイの税法による制約があり、予想外の課税リスクが発生する可能性もあります。
本記事では、タイでのオフショア法人設立の現状、税制上の問題点、そして代替案としてフィリピンでの法人設立の可能性について詳しく解説します。
1. タイでのオフショア法人設立の実態
1.1 タイでの法人設立の基本
タイでは、外国人が法人を設立する場合、以下の3つの主要な選択肢があります。
- タイ法人(ローカル法人)
- 最低51%をタイ人株主が保有する必要がある
- 法人税率は通常20%
- 外国人が100%所有するにはBOI(投資促進庁)の認可が必要
- 外国法人の現地支店
- 税務上、タイ国内での収益はタイで課税される
- 銀行口座開設やビザ取得に制約がある
- オフショア法人(タイ国外で設立)
- いわゆるタックスヘイブン地域で法人を設立し、タイに住みながら運営
- 法人自体の税率は低いが、タイの個人所得税が問題になる
1.2 タイの税制とオフショア法人の問題点
タイに住みながら、オフショア法人で収益を上げる場合、以下のような税制上の問題が発生します。
(1) タイの個人所得税(Remittance Basis の改正)
以前は「タイ国外で発生した所得を翌年以降に持ち込めば課税されない」というルールがありましたが、2024年1月から 「タイ居住者は海外所得に課税される」 という税制改正が行われました。
つまり、海外のオフショア法人からの収益をタイ国内に持ち込んだ場合、タイの個人所得税(最高35%)が課税される可能性があります。
(2) CFC税制(タックスヘイブン対策税制)による課税
日本の税制では、海外法人の所得を日本に住む株主に課税する「タックスヘイブン対策税制(CFC税制)」があります。
タイ移住後、日本の居住者でなくなれば適用外になると思われがちですが、
- 日本との経済的な結びつき(家族、資産)が強い場合、日本の税務当局から課税される可能性がある
- 日本の非居住者になった後でも、一定の条件で税務調査の対象になることがある
したがって、日本とタイの双方の税務リスクを考慮する必要があります。
(3) タイの移住制度と長期ビザの制約
タイに長期滞在するには、以下のようなビザが必要です。
- エリートビザ(長期滞在向け、有料)
- リタイアメントビザ(50歳以上向け)
- ビジネスビザ(Non-B)(法人設立や雇用が必須)
オフショア法人のみでタイに居住する場合、適切なビザの取得が難しく、結果的に不安定な滞在になるリスクもあります。
2. タイの代替案としてのフィリピン
2.1 フィリピンの税制メリット
タイの税制が厳しくなった一方で、フィリピンはオフショア法人設立に適した環境が整っています。
- 法人税が最大25%(条件によっては5%以下)
- PEZA(経済特区)を利用すればさらに低税率が可能
- 海外所得に対する課税が比較的緩やか
- 英語が公用語で、ビジネス環境が整っている
2.2 フィリピンの法人形態
- フィリピン法人(国内法人)
- 外国人100%所有可能(業種による)
- 法人税率は基本25%、特区利用で5%程度まで軽減
- オフショア法人(経済特区法人)
- PEZAなどの特区で法人を設立すれば、税率が極端に低くなる
- 免税措置があるため、実質的な節税が可能
2.3 フィリピンの長期滞在ビザ
フィリピンには、タイより取得しやすい長期ビザがあります。
- SRRV(リタイアメントビザ):50歳以上なら約2万USDの預金で取得可能
- SIRV(投資家ビザ):法人設立に伴う投資で取得可能
- ビジネスビザ(9G):法人経営者向けのビザ
3. まとめ:タイ移住 × オフショア法人の現実
タイでオフショア法人を設立するメリットは、かつてはありましたが、税制改正やCFC税制の影響で現在はほぼ消滅しています。
タイ移住とオフショア法人を組み合わせるデメリット
✅ タイの個人所得税の改正により、海外所得も課税対象になる
✅ CFC税制によって日本の税務リスクも残る
✅ 長期ビザ取得が難しく、滞在が不安定になりがち
おすすめの代替案:フィリピン法人設立
✅ フィリピンなら低税率で合法的に節税可能
✅ 長期滞在ビザが取得しやすく、居住環境が安定
✅ PEZA特区などの優遇制度を活用すればさらに税メリットが大きい
結論として、「タイでオフショア法人を作るのはもう旨味がない」。
これから海外移住とビジネス展開を考えるなら、フィリピンの方が圧倒的に有利 です。
